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Hearty Medical Care

頭頸部甲状腺外科センター・耳鼻咽喉科

音声・嚥下専門外来

当科は、西日本では数少ない頭頸部外科・甲状腺外科の専門施設です。

頭頸部がんや甲状腺がんは腫瘍の占拠する部位の特性から、気道や食道に手術操作が及ぶものも多く、声帯麻痺(反回神経麻痺)や嚥下障害の患者さんを数多く治療してきました。

当科は、嚥下障害や音声障害の手術療法を行える数少ない施設です。

嚥下障害とは

病気や疾患により食べ物や唾液の「飲み込み」に障害が生じている状態です。当院では、嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査を行い、嚥下障害の原因を探り、またその解決方法を患者さんやご家族と相談しながら治療を行っています。NST嚥下チームとしても活動を行い、嚥下内視鏡検査は年間400件以上を行っています。

声帯麻痺は、食道がん、肺がん、胸部大動脈瘤などで迷走神経や反回神経が障害された場合に生じます。その他、痙攣性発声障害や声帯ポリープなどによる発声障害に対しても、手術治療や音声リハビリを行っています。

嚥下手術の例

嚥下手術には、大きく二つの手術があります。
手術により嚥下の改善が望める場合には、1. 嚥下改善手術を、また改善が難しく、嚥下障害により肺炎を繰り返している場合や気管切開が必要な患者さんでは、2. 誤嚥防止手術を行っています。

1. 嚥下改善手術

嚥下機能を補助・修復する手術です。障害に応じて、手術方法を選択します。当院で行っている代表的な嚥下改善手術には、輪状咽頭筋切除術(図4)、喉頭挙上術(図5)、咽頭弁手術、
咽頭縫縮術、前述の喉頭形成術(甲状軟骨形成術、披裂軟骨内転術)があります。

(図4)輪状咽頭筋切除術

輪状咽頭筋は食道入り口を締めている筋肉で、嚥下の際は緩みます。輪状咽頭筋が機能不全となり、嚥下を妨げている場合には切断し、食道の入り口を広げます。

 

(図5)喉頭挙上術

嚥下をするときには、のど仏(=喉頭)が上前方に上がります。脳梗塞などでこの喉頭拳上が出来なくなった方には、図の赤い矢印のように喉頭を糸で吊り上げ、喉頭を拳上させた状態を作る手術をします。

2. 誤嚥防止手術

食事の通り道と呼吸の通り道を分けてしまう手術で、誤嚥が全くなくなるため多くの方で食事が可能になり、呼吸も楽になります。また吸痰が必要な患者さんでは、吸痰回数も激減します(介護者の負担も軽くします)。ただし発声をあきらめる手術になります。

対象者

  1. 気管切開で声を出す見込みがないが、なんとか食事をしたい方
  2. 声を使った意思疎通のない方
  3. 誤嚥性肺炎を繰り返していて、誤嚥防止手術が救命のために必要である方

 (図6) 誤嚥防止術

誤嚥防止手術には、いくつかの術式があります。一般的な喉頭気管分離術や喉頭全摘のほか、声門下喉頭閉鎖術などがあります。嚥下障害の患者さんは、誤嚥性肺炎を繰り返され、栄養状態が不良である方が多く、術後合併症としての縫合不全が危惧されます。当施設では、縫合不全が少なく、また作成した気管切開孔の狭小の可能性が少ない(カニューレを必要としない)声門下喉頭閉鎖術を多くの方に選択しています。過去3年間に33名の方にこの手術を施行しました。術後合併症としての縫合不全(瘻孔形成)はなく、またカニューレを必要とした患者さんはおられませんでした。

(図7)声門下喉頭閉鎖術

①、②:甲状軟骨摘出 ③:声門下喉頭閉鎖、輪状軟骨摘出 ④:気管孔形成

特徴

  • 気管粘膜に比べ、声門下粘膜は組織が厚く、縫合不全が少ない。
  • 輪状軟骨を摘出することで、食道の開きが良い。
  • 輪状軟骨を摘出することで、気管切開孔を大きく作成できる(狭小が少ない)。

 

音声手術の例

甲状腺がんによる反回神経浸潤に対しては、摘出手術と同時に反回神経再建術を行います(図1)。反回神経を切断したままでは、声帯はやや開いた状態で固定し、時間と共に声
帯の委縮が起こります。症状として、嗄声や嚥下障害(誤嚥)が生じ、声帯の委縮が進むと発声持続時間も短くなります。反回神経再建を行っても、声帯の可動を回復することは
ほぼありませんが、声帯が閉鎖位(声を出すときの位置)に固定すること、また声帯の委縮を防ぐ効果があります。通常数カ月後には、元の音声に近い状態に回復することが期待できます。

(図1)反回神経・食道浸潤例
術前より声帯麻痺あり
反回神経:神経移植(大耳介神経) 食道:筋層切除

しかし、肺がんや甲状腺がん手術で、反回神経が切断された状態が長期に及ぶ場合や、早急に嗄声の改善を望まれる場合には、当院では甲状軟骨形成術I型(図2)、披裂軟骨内転術(図3)を行っています。これらの手術は、声帯の閉鎖を補助する手術で、発声を楽にします。また食事のしにくさ(ムセ)を改善する効果もあります。手術は通常、局所麻酔で30分から1時間半程度です。患者さんの負担も軽く、がんで予後の不良な患者さんであっても施行可能です。

(図2)甲状軟骨形成Ⅰ型

声帯のすぐそばに詰め物をして、きちんと閉じられるように声帯を内側にむかって押します。

 

(図3)披裂軟骨内転術

声帯が閉じられるように、麻痺した声帯の軟骨に糸をかけて引きます。